昨今の宿泊業界はどこも、人材不足やインバウンド客対応等の課題があります。一方で、巷では「DX化」という言葉があふれていて、なんとなくこれらの課題をマルっと解決してくれそうな響きです。
今回は、DX化を進めるための考え方をご紹介します。
【DXとは】
すでにご存じの方が多いとは思いますが、おさらいです。DXとはデジタルトランスフォーメーションの略です。宿泊業界においては、「デジタル技術を用いて、業務効率化を図り、顧客により良いサービスを提供すること」となります。
【「デジタル化」との違い】
DXとデジタル化は、同じように聞こえますが、違いがあります。
よくあるデジタル化の事例としては、今まで紙ベースで管理していた帳票(データ)をデジタルベースに置き換えることです。予約台帳等、手書き作業を行っていることにより、時間がかかり、さらに従業員全員が簡単に閲覧することが難しいといった問題を解決することです。
一方で、DXとは、これらのデジタル化したことで得られる情報や最新システムを活用することにより、業務の効率化やお客様の利便性を向上させていくことが期待できるものになります。
つまり、DXを検討するにあたり、自社のデジタル化ができているかが重要になり、ある程度のデジタル化ができた上で、続いてDXを検討できる段階になります。
【宿泊業におけるDX】
宿泊業におけるDXについて、いくつかご紹介します。
1. 宿泊予約・管理
一般的にはPMS(予約管理システム)やサイトコントローラーの導入及び連携です。これらを活用することで、売上の最大化を図ることが可能となります。
予約のすべての情報をPMSで管理することで、正確な空室情報や予約状況、宿泊履歴等、必要な時にスムーズに全従業員が情報を引き出すことができます。さらに、実績データから、今後の適切な販売方法を検討・実施することが可能となります。また、各ツールを連携することにより、面倒な在庫管理や料金設定は全て自動化されます。
もし、PMSやサイトコントローラーを導入済みでも、いまだに手書きの書類が手元に多く残っている場合は、さらなるDXを検討する前に、オペレーションの見直しを実施することを推奨します。
また、気を付けるべき点としては、自動化される在庫管理や料金設定が、企業が期待している本来の形になっているかどうかの判断ができる人材育成がなされているかどうかです。そもそも判断できないと、誤った管理を正す機会を失いかねません。
2. 顧客対応
前述のPMSでの管理が徹底されることで、さらなるDXを進めることが可能となります。
例えば、追加のシステムを導入することにより、自動車ナンバーから宿泊履歴を自動照合することが可能となったり、過去履歴からお客様ひとりひとりが好むサービスを従業員全員が即座に把握することができたりします。
また、自動チェックインツールを導入することで、フロントの人員・業務の削減が期待できます。
さらには、チャットボットや観光客向けタブレット等の導入を行うことにより、多言語対応や人件費削減への課題解決になります。また、24時間対応が可能となることで、お客様のメリットも大きくなります。
他には、配膳ロボットの活用等もあります。ファミレス等では多く導入されており、多くの人が見慣れた光景となりましたが、どうしても高級単価の宿泊施設では導入しづらさがあります。しかしながら、一部の高級ホテル等では、配膳ではなく、バッシング(食器下げ)の際に活用しています。バッシングの際に洗い場に居る時間を削減することで、ホールでのサービス向上を図ることが可能となります。
宿泊業では接客が命ではあります。DX化することは、あくまで顧客満足度を強化することを目的とした上で検討しなければならず、目先の人員不足や人件費削減ばかりに気を取られることのないようにしていただくことが必要です。
3. 清掃業務・施設の管理
客室清掃や大浴場等の共用スペースの清掃等にも、お客様の入退場を感知するIoTテクノロジーを導入することで、効率化や顧客満足度強化を図ることが可能となります。
例えば大浴場。数時間毎に清掃に入ることが一般的ですが、人感センサーを取り付けることにより、使用者数を管理し、一定数以上になったタイミングで、従業員に清掃やメンテナンスを促す通知が来るといったものになります。
また、客室入口に設置すれば、清掃にいくタイミングを計ることができたり、お客様が向かう先で、お出迎えの準備ができたりします。
この他、清掃ロボットを活用することにより、人件費の削減が見込まれます。
【DXを進めるには】
効率化ばかりが先行することにより、結果、顧客満足度・従業員満足度の低下や、利益の減少が起きる可能性は十分にあります。
システムの機能自体は理想的でも、実際に自社の実態や課題に沿ったものであるかどうかの見極めは十分に行う必要があります。そのためにも、まずはどのような業務にどのような改善が必要なのかを精査するところからスタートすることを推奨します。
また、システムによっては導入費や月額使用料が高い場合が多々あります。導入した場合としなかった場合の今後の損益をしっかり計画することを推奨します。システムによっては「IT導入補助金」が対象になる場合があります。
以上の通り、先走ったDX化はおすすめできず、まずは自社としっかり向き合うところからスタートしてみてください。
自社の課題が何なのか、DXを導入すべきか等、悩んだ際にはぜひ弊社にご相談くださいませ。